グローバルで化粧品業界に求められるコンプライアンスと規制への対応、ソフトウェアによる自動化とは
化粧品・パーソナルケア用品業界は、世界でも最も成長が見込まれる市場のひとつです。消費者の需要が急速に伸び、規制が強化される中、企業は化粧品規制を遵守する必要があり、規制を遵守しなければブランド価値を守れずに、多大な経済的損失を招く恐れがあります。
商品の成分と効力の分析、各種試験、結果管理、ラベル、パッケージング、表示まで、商品開発の全工程で、関係者は各種規制への遵守が求められます。これらは時間とリソースを必要とする業務であり、必要不可欠なプロセスです。化粧品業界でコンプライアンス対応を怠れば、ブランドへのダメージと経済的損失は計り知れません。
各国の化粧品製造に適用される、様々な規制と、化粧品コンプライアンス対応の徹底をソフトウェアスクリーニングによって効率化し、業務精度を高める方策を解説します。
化粧品規制とコンプライアンス対応とは
化粧品業界は現在厳しく規制されていますが、規制、制限、ガイドラインは各国ごとに異なります。それぞれの国や地域には独自の化粧品に対する規制体制があり、化粧品・パーソナルケア用品ブランド、小売業、メーカーは、各地域での商品の販売や使用への承認に向けて、コンプライアンス対応を徹底しなければなりません。以降では、アメリカ、イギリス、EUにおける規制を例に取り、内容を紐解きます。
アメリカ合衆国における化粧品規制は、米国食品医薬品局(FDA)が策定しています。FDAは、連邦議会で制定された連邦法の権限に基づいて化粧品を規制しており、その中でも重要なものは、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C法)と公正包装表示法(FPLA)の2つです。
FD&C法は、州際通商における粗悪品または不当表示化粧品の販売を禁止しています。粗悪品とは、成分、汚染物質、加工、パッケージング、出荷および取り扱いのいずれに起因するものでも、配合に関わる違反を意味します。不当表示は、不適切な表示や詐称的なパッケージングに関わる違反です。
また、重要な事実を提供しなかったために、不当表示とされる場合もあります。例えば、商品の安全な使用を保証するために必要な指示や警告文などが、重要な事実の提供です。さらにFDAは、FPLAに基づき、小売で消費者へ提供される化粧品の成分リスト提示を求めています。
FPLAに準拠していない化粧品は、FD&C法の下で不当表示とみなされます。この要件は、業務用、施設用(学校や職場など)、無料サンプルやホテルのアメニティとしてのみ配布される化粧品には適用されません。FDAは、これらの法律に違反する化粧品、および違反商品を販売する企業や個人に対して権限を持ち、行動を起こすことができます。
EUの化粧品規制
EU域内での商品の自由な移動には、同じラベル、パッケージング、そして安全規制の適用が必要です。これらを念頭に、EU化粧品規則((EC) No.1223/2009)が2013年7月に発令されました。
EUの化粧品規制の重要な原則は、化粧品を市場に出す個人または企業がその商品に責任を持つ(いわゆる「責任者」)ということです。商品が安全であり、化粧品規制のすべての要件を満たしていることを保証するのは、その個人または企業(通常はメーカーまたは輸入業者)の責任となります。
成分の選択から商品の上市に至るまで、化粧品開発・企画の全工程は化粧品規則によって規制されています。
イギリスでは、すべての化粧品の製造と供給には、英国化粧品規制(製品安全性及び計量等 Schedule34)が適用されます。EUの化粧品規制と同様に、英国もEU化粧品規則((EC) No.1223/2009)とその改正の原則を踏襲しています。
化粧品コンプライアンス対応ソフトウェアとは?
化粧品の市場投入は、その国特有のガイドラインに従うことを意味します。ガイドラインは国によって大きく異なるため、マニュアル作業によるコンプライアンス対応の確認は、時間の浪費とミスにつながります。
さらに、これらの各種規制とガイドラインは変更される可能性があり、対応プロセスはさらに複雑になります。コンプライアンス対応のスクリーニングソフトウェアは、適合性確認のプロセスを自動化し、複雑な業務の代行を促進します。リアルタイム更新により、規制が変更された場合でも、商品を効率的にスクリーニングすることが可能です。
化粧品コンプライアンス対応ソフトウェアが効果を達成する領域
- 規制
化粧品コンプライアンス対応スクリーニングソフトウェアは、自社商品が目的とする国や地域における確実な商品化のために有益です。正確な名称、アレルゲンの閾値、市場特有のラベル要件、CNCP、適正な利益率などを検証します。 - 商品開発と配合
原材料の選択から商品中の濃度に至るまで、コンプライアンスに関する課題は、特に商品開発・配合の段階で発生する可能性が高いといえます。化粧品コンプライアンス対応ソフトウェアは、化粧品規制への準拠を証明するための、カスタマイズされたデータシートや分析証明書を提供し、品質管理において重要な役割を果たします。詳細を読む - パッケージングとラベル管理
商品の配合、製造工程、性質、原産地、価格、各種記述などに関するあらゆる情報は、化粧品コンプライアンスソフトウェアに保存されます。このデータは、配合表(BOM:Bill of Material)、製品ライフサイクル管理(PLM)、PIF(製品情報ファイル)など、さまざまなシステムで活用されます。これにより、正確で迅速なレポート作成が可能になります。さらに詳細を読む
コンプライアンスをめぐる最重要課題とは
規制は変更され易く、企業は各商品について、すべての最新の規制文書を含む商品情報ファイルを保全し続ける必要があります。文書が古かったり、監査中に紛失すれば、深刻な問題を引き起こします。
コンプライアンス対応を徹底するためには、膨大なデータが発生し、多くの場合、さまざまな部門やサプライヤーにわたって、データが存在します。企業は、継続性を保ち、時間を節約し、エラーや手戻りを削減し、最終的にコンプライアンス対応を強化するために、この散在するデータを集約管理する必要に迫られます。
規制は経済圏や国ごとに異なります。化粧品・パーソナルケア用品業界の企業にとって、商品情報を各地域の成分規制データベースと直接連携し、規制遵守を確認できることは極めて重要です。
化粧品・パーソナルケア用品ブランド、小売業、メーカーは、コンプライアンスデータとプロセスを効果的に管理し、最適化することで、地域ごとに一貫したコンプライアンス対応の徹底が可能となります。
消費者が商品の製造方法についてより詳しい情報を求める中、企業にとって、成分、製造、サプライチェーンのコンプライアンスに関するトレーサビリティの確保と可視化は非常に重要です。より健康的で持続可能な選択肢を求める声が高まり、企業は化粧品・パーソナルケア用品に関わる成分や商品に表示される「ナチュラル」や「オーガニック」といったラベルの技術的な定義や基準を確実に守る必要があります。
化粧品・パーソナルケア用品業界の企業は、未来を念頭に行動する必要があります。グローバルな規制環境が変化し、平等性とサステナビリティにシフトする中、企業にとって、商品開発サイクルとサプライチェーン全体を通じてコンプライアンス対応強化を確実にするための革新的なソリューションが不可欠です。
化粧品・パーソナルケア用品ブランドや小売業は、商品を効率的に市場に投入するため、商品に問題があれば迅速に特定し、どのサプライヤーが最も効果的に機能しているかを可視化する必要があります。メーカーにとって、コンプライアンス違反の迅速な特定は、商品リコールのリスクを低減し、ブランドや小売業との信頼関係を築き、ビジネスの評判を維持するために欠かせません。
誤ったラベルや商品表示は、競合他社や規制当局から費用のかかる難題を突きつけられ、リコールや商品の再パッケージング、再販売の費用につながる可能性があります。商品表示の誤りはまれですが、大きな影響を持っていることは確実です。
サプライヤーネットワークを適切にモニターできなければ、ブランド、小売業、メーカーはコンプライアンス違反のリスクに直面する可能性があります。サプライヤーとより協力的な関係を築きながら、時間の浪費やコストのかかるコンプライアンスエラーをなくすために、サプライヤーとのコミュニケーションを改善することが重要です。
PLMによる化粧品のコンプライアンス対応管理
コンプライアンススクリーニング・ツールとは異なり、化粧品・パーソナルケア用品業界のブランド、小売業、メーカー向けに設計された製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションは、コンプライアンスの中核的課題に対処するだけではありません。PLMソリューションは、統合的なアプローチにより、サプライヤーコラボレーションから成分試験、パッケージ表示まで、商品のライフサイクル全体にわたって品質管理とコンプライアンス徹底を実現します。
PLMは、商品コンセプトから消費者へ届けるまでのすべての商品関連データのリアルタイム管理を実現するレポジトリとして機能し、すべての商品カテゴリのサプライチェーン全体に対する完全な可視性と透明性を提供します。関係メンバーは、ダッシュボード、アナリティクス、モバイルアプリを組み合わせて使用し、商品の品質、コンプライアンス、コスメトビジランスを深く掘り下げ、工場監査、合格品質限界(AQL)測定、サプライヤーのパフォーマンスを追跡しながら、サプライヤーコラボレーションの改善を推進します。
PLMは、品質管理および薬事管理者に、ラボでの処方分析、サプライヤーからの成分リスト、試験結果など、商品の承認を決定するために必要なすべての最新情報を提供します。可視化を向上し、品質管理の効率化によって、小売の段階で品質に関わるリスクとコストを低減することができます。
化粧品・パーソナルケア用品向けPLMは、配合やラベルに使用される化粧品原料データベースと連携し、各成分のINCI名、CAS番号、化学物質名、機能、制限事項などの正確な情報の活用を含め、コンプライアンス対応を徹底します。この統合されたデータをもとに、Centric PLM™は 自動的に成分表を作成し、必要なドキュメントを作成します。
規制に準拠したパッケージングやラベルの作成には、時間がかかり、ミスも起こりがちです。Centric PLMを使用すれば、パッケージ仕様の把握や共有、アートワーク概要の作成が可能になります。テンプレートには成分やラベルの表示など、最新の商品情報が自動的に入力されるので、安全性の確保とコンプライアンス対応が徹底されます。
商品に関連するすべてのデータを1つのデジタルスペースに集約し、一気通貫でのトレーサビリティを実現することで、ブランドや小売業は、原材料の原産地、サステナビリティ、安全性に関する詳細な情報を求める消費者ニーズに応えることができます。
化粧品業界におけるコンプライアンスは複雑です。化粧品・パーソナル用品業界向け Centric PLM のようなコスメ専任のコンプライアンスソフトウェア・ソリューションに投資することで、コンプライアンスに関わる業務精度が向上し、ボトルネックを削減、業務標準化と規制遵守を実現し、商品化リードタイムの短縮が可能となります。